山岳トンネルは,特殊な条件下を除き,一般に地震に強い構造物とされてきた.しかしながら,近年の地震でトンネル坑口部以外の一般部でも覆工の崩落を伴うような被害を受けた山岳トンネルが存在することから,合理的な耐震対策工の検討が課題となっている.これまでの地震による山岳トンネルの被害は,地質の急変部にトンネルが位置するなどの特殊な条件を除けば,大まかに図-1 の三種類に大別されると考えられている1).TYPE-I は,肩部に曲げ圧縮破壊や曲げ引張ひび割れが発生するケース,TYPE-II は天端部に圧縮破壊が発生するケース,TYPE-III は側壁部に圧縮破壊が発生するケースである.これらの被害が発生するメカニズムは必ずしも解明されていないが,TYPE-I~III の被害は,それぞれ地山のせん断変形,水平圧縮変形,鉛直圧縮変形により再現できる可能性があることが指摘されている1).既往の研究1)では,TYPE-II は地山の水平圧縮変形,TYPE-III は地山の鉛直圧縮変形で再現できることが確認されており,本研究は,肩部に曲げ圧縮破壊や引張ひび割れが発生するTYPE-I の被害を再現解析を行い,破壊が生じる外力を静的荷重に換算した場合の荷重の大きさについて検討を行った. |