浅層物理探査が対象とする表層30mの領域は,ほとんどの場合表層が舗装や盛土などの人工地盤で覆われており,さらに下位の自然地層にも改変が加えられている場合が多い.従来地球内部構造を対象とする調査研究では,このような人工地盤や地層改変の影響は無視されるか,あるいは除去すべき雑音対象として扱われてきた.一方社会生活は基本的にはこの表層空間領域で営まれており,その不均質構造や耐震性などを評価することは,安全安心な都市機能の維持,各種社会インフラ施設の維持管理を推進する上で最も重要な現場計測課題の一つになっている.都市域では表層がアスファルト等で舗装されており,さらに地下浅所にはほとんどの場合金属製の埋設管が敷設されていることから従来の電気・電磁探査手法は適用が難しい.さらに屈折法地震探査も最表層部に高速度層が存在する条件下では適用・解析が困難となる.これに対し表面波探査は速度逆転層があっても解析が可能である.加えて高周波領域における速度分散を解析することによって,地表下数10cm~数mの極浅層領域の2次元S波速度層構造を取得することができる.この手法を用い,舗装および盛土のS波速度構造を把握する手法の開発と実用化研究を進めてきた.この間の調査実験によって,従来の地震計をベースプレートを介してカップリングさせるランドストリーマー方式の表面波探査によっても,500 Hz程度以上の表面波の位相速度分散特性を測定できることがわかった.また加速度センサを用いることで,4 kHz程度以上まで分散特性を追跡することができることがわかった.ただし加速度センサを用いた高周波表面波測定においては,センサを舗装路面に接着させることが必要であり,機動性が不足しているとともに路上での作業安全性の確保の面でも問題があった.そこでマイクロフォンアレイを用いて漏洩表面波を取得する非接触型の表面波計測システムを開発した.漏洩表面波の取得にあたっては,音速で伝播する振源雑音の低減が求められるが,マイクロフォンアレイを音波吸収函体で覆い,函体を可搬型にすることで解決した.これらのツールを用い,深さ1m程度までの舗装・盛土の内部物性構造を2次元S波速度構造断面としてイメージングできることがわかった. |