砂質土によって作られた河川堤防においては、河川水位の上昇時や降雨時などにのり尻が小崩壊した後、崩壊が徐々にのり面の上方に拡大する進行性の崩壊が発生することがある。このような堤防の進行性破壊は、浸透水の作用に起因する現象と考えられているが、一般的に知られているすべり破壊やパイピング現象とは異なり、破壊時の挙動などについて必ずしも明らかとなっていない状況にあった。これまで土木研究所では,上記の現象に係る大小の模型実験を繰返し実施し,細粒分の多寡によって一般的に知られているすべり破壊から進行性破壊に遷移すること1),良く締め固められている場合や礫がある程度含まれるとのり尻からの進行性破壊は極めて生じにくくなること1),2),3),初期ののり尻の小崩壊に関してはのり尻付近の極めて狭い範囲の局所的な動水勾配が影響していること4) を明らかにし,模型実験の結果を三軸試験から得られる強度定数を用いた円弧すべり計算で表現するのは簡単ではないこと5),6)を示してきた。ここでは,小崩壊の発生後の法面上方への崩壊の進行を詳細に把握し,砂質土の中でも崩壊しやすい土とそうでない土が存在するのか,存在するのであれば室内土質試験で区別することができるか等の観点から実施した2つの大型模型実験と室内土質試験の結果の一部を示す。 |