のり面の安定性の確保や地すべりに対する抑止工として、我が国では1957 年にグラウンドアンカー工が導入され、現在まで道路のり面、ダムサイト、地すべり対策など幅広い分野に使用されている。アンカーは、大部分が地盤内に埋設されており、地盤内の状態を把握することが困難なため、現在まで適切な維持管理が十分に行われてきていない状況がある。アンカーの維持管理を行う上での課題として、地すべり等により地盤内にすべり変位が発生しアンカーに負担がかかった場合、テンドンの破断が発生する可能性が考えられる。アンカーは数百kN 以上の緊張力で定着されているため、破断した場合に飛び出すおそれがあり、場合によっては第三者に被害を与える可能性も考えられる。写真1は、実際に地すべり挙動によりアンカーが破断し数十m 飛び出した状況である。現在までアンカーの破断に関する評価は、軸方向の引張載荷により引張強度を求めることが一般的で、アンカーに曲げやせん断方向の変位が作用した場合の破断の評価は十分行われていない。本報では、実物大アンカー試験装置を用い、PC 鋼より線を使用したナット定着とくさび定着のアンカーに対し、種々の荷重で定着させた状態で垂直方向の曲げ変位を与えることでアンカーを破断させ、この時のアンカー緊張力と垂直荷重、垂直変位の関係について検討を行った結果について報告する。 |