グラウンドアンカー工が施工されたのり面において,供用後,想定外の豪雨や地震等の外力による地すべり変位などにより過緊張破断が確認されたアンカー自由長部の破断面形状は,一般にみられる軸力方向での延性破断形状(カップアンドコーン形状)ではなく,シャープなせん断形状で破断した事例が確認されている。2011 年4 月11 日に発生した福島県浜通り地震において,のり面変状により多数のアンカーが破断し,その一部のアンカーはアンカー頭部と支圧板や受圧構造物の境界付近において,せん断により破断された状況が確認された。供用後のアンカー工において,地震だけでなく背面地質・地盤の経年変化による受圧構造物の沈下やズレ,地すべり変位などによりアンカーと受圧構造物の位置や角度に変化が生じた場合,アンカーに軸力方向の変位だけでなく,せん断方向を含めた様々な負荷が作用することも考えられる。現在アンカーの破断に関する評価は,軸方向の引張載荷により引張強度を求めることが一般的であるものの,今後のアンカー工の長期供用において,アンカー工の破断飛び出しに対する安全性の向上を考慮した維持管理を行う上で,アンカーに曲げ方向やせん断方向の変位が作用した破断に対する評価が必要であると考えられる。本報告では,基礎実験として実物大アンカー試験装置を用いて,アンカーを緊張定着させた状態で曲げ方向の垂直載荷を行うことで破断させ,アンカーの破断状況に関する実験結果について報告する。 |