切土のり面の斜面安定工や地すべり対策に用いられるグラウンドアンカー工(以下,アンカー)は,維持管理が必要な土構造物の一つであり,土木研究所・日本アンカー協会共著「グラウンドアンカー維持管理マニュアル1)」の発刊が契機となり近年アンカーの点検,健全性調査が急速に普及しつつある。これらの点検・調査の中で発見されるアンカーの破断飛出しは,場合によって第三者に被害を与える恐れがあり,破断飛出しが予見される場合には,その原因とアンカーの状態に応じた飛出し防護対策が重要である。一方で,アンカーの破断現象は発生後に確認されるケースが殆どであるため,破断時の挙動を理解するには実物試験装置による再現が必要である。現在までのアンカー試験装置による破断に関する評価は,軸方向の引張載荷により引張り強度を求めることが一般的であり,実際の地盤のようにアンカー自由長区間に曲げやせん断方向の変位が作用した場合の破断の評価は行われていない。筆者らは,アンカー試験装置を用いてPC 鋼より線を使用したアンカーについて,垂直方向のせん断変形を与えた場合の破断荷重に関する基礎実験を進めており2),併せて破断時の衝突荷重計測ならびに高速度カメラによるアンカー頭部挙動の観察を行っている。本報では,アンカー実物試験装置を用いたテンドン破断時の衝突荷重ならびにアンカー頭部の挙動について報告する。 |