これまで、ダムは我々人間の生活を治水・利水両面から支え、生活の安全性や豊かさの向上に大きな役割を果たしてきた。その一方で懸念されてきたのが、流域環境の質の低下である。河川法改正から20年が経過し、流域環境の保全の重要性が広く認識されるようになった今、今後はますます「人間生活と生態系保全の調和を目指したダム管理」が必要不可欠となってくるだろう。また、今後のわが国の課題として忘れてはならないのが、「人口減少」と「社会資本の老朽化」である。日本社会がこれまでとは異なるフェーズへ移行していく中で、どのようなダム管理が考えられるだろうか?本集会ではまず、ダムが流域環境に与えるインパクトについて整理を行う。ダム影響については、これまで個別河川や地域といった事例的な評価が多くなされてきたが、本集会では、全国スケールで蓄積されてきた貴重な河川環境の基盤データを活用することで、一般性の高いダム影響の提示を試みる。さらに後半では、流域環境の再生に焦点を当て、ダムを対象とした河川再生の先進的な事例や、今後必要性が予想される管理上の視点について紹介する。本集会の最後には、今後のダム管理に関する総合議論の時間を取る予定である。本集会の発表者や生態学者だけでなく、河川技術者や管理者といった様々な方々の活発な意見交換の場として利用頂きたい。 |