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発表 石礫の露出高とアユの体サイズとの関連

作成年度 2017 年度
論文名 石礫の露出高とアユの体サイズとの関連
論文名(和訳)
論文副題
発表会 ELR2017
誌名 ELR2017
巻・号・回  
発表年月日 2017/09/22 ~ 2017/09/25
所属研究室/機関名 著者名(英名)
国立研究開発法人土木研究所水環境研究グループ自然共生研究センター小野田幸生
株式会社建設技術研究所堀田大貴
国立研究開発法人土木研究所水環境研究グループ河川生態チーム萱場祐一
抄録
1.はじめにダムの堆砂問題の解決は、ダムの治水・利水機能の確保だけでなく、土砂輸送の連続性の回復も期待できる1)。ただし、ダムからの人為的な土砂供給が本格化されるに際して、水生生物への影響の評価や予測は必須であり、その基礎となる知見が求められる。水産有用魚種であるアユに関しては、土砂供給による付着藻類の剥離・更新が餌の質を高めるという報告がある一方で2)、土砂の供給過多による石礫の埋没が採餌場所を変化させる影響についてはほとんど検証されてこなかった。それに応えるために、著者らは、砂を多く生産する矢作川水系で、石礫の露出高(砂面から石礫頂部までの高さの最大値として定義)とアユの食み跡の有無との関連を調べ、少しでも石礫が砂面から露出していれば(露出高:10 mm程度)アユの食み跡が見られるという結果を得た3)。アユの好漁場の条件4)比較すると過小評価と考えられ、群れアユや小さいサイズのアユによる食み跡が混入したためと考えられる。したがって、水産有用魚種のアユへの配慮という視点からは、アユの体サイズやなわばり形成の有無を含めた評価が必要となる。そこで、本研究では、なわばりアユ(ここでは、なわばりの防衛行動や石礫への固執を示したアユと定義)の有無や体サイズと利用された石礫の露出高との関連を調べ、水産有用魚種としてのアユに必要とされる露出高の設定に資する知見を提供することを目的とした。2.方法矢作川水系で河床の砂の多寡の異なる地点を13地点(矢作川本川5地点、巴川6地点、籠川2地点)設定した。各地点の瀬を対象に、スノーケリングを用いて2人×1時間程度観察し、なわばりアユの有無、体サイズを記録するとともに、なわばりアユが良く利用した石礫をナンバリングした錘で目印した後、その露出高を計測した。3.結果と考察アユの食み跡は全調査地点で確認されたが、なわばりアユは露出高の大きな石礫のある上流側の地点でのみ確認された。このことから、なわばりアユはより大きな石礫を利用すると考えられる。実際、アユが利用した石礫の露出高の範囲は20~400 mm程度で、アユの食み跡が残された石礫の露出高よりも大きい傾向が見られた。また、体サイズの大きななわばりアユほど、大きな露出高をもつ石礫を利用する傾向があった。したがって、水産価値の高いアユを保全するためには、食み跡の有無から予想されるよりもより大きな露出高をもつ石礫が必要になると考えられる。今後も、石礫の露出高とアユの体サイズやなわばり行動との関連などを蓄積し、河川の土砂管理に反映させていく必要があるだろう。
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