国立研究開発法人土木研究所

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発表 河道内氾濫原と水田域におけるカエル類の生息状況の比較

作成年度 2019 年度
論文名 河道内氾濫原と水田域におけるカエル類の生息状況の比較
論文名(和訳)
論文副題
発表会 第1回環境研究機関連絡会研究交流セミナー
誌名 第1回環境研究機関連絡会研究交流セミナー
巻・号・回 12 
発表年月日 2019/12/13
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態チーム田和康太〇
岐阜大学流域圏科学研究センター永山滋也
水環境研究グループ萱場祐一
河川生態チーム中村圭吾
抄録
1. はじめにカエル類は,水田水域を代表する動物群である.しかしながら,水田水域における生息環境の悪化に伴い,多種がその個体群を全国的に激減させている.その一方で,河道内氾濫原(近代以降の後背湿地の開発に伴う,縦断的かつ連続した堤防整備により,堤外地に限定される状態となった氾濫原)に形成されるワンドやたまりといった水域は,カエル類をはじめとする湿地性動物群集の重要な生息場所となることが期待されている.本研究では,カエル類の一大生息地である濃尾平野に着目し,揖斐川,長良川,木曽川の河道内氾濫原において,カエル類の生息状況を調査した.それらの結果を,近隣の水田と比較することで,河道内氾濫原がどのようなカエル類に利用されているかを精査した.2.方法2017 年と 2018 年の 6 月および 2018 年と 2019 年の 3 月に,揖斐川,長良川,木曽川の 27 か所の河道内氾濫原水域(以下,河道内湿地)と 27 枚の周辺水田において,カエル類の生息・繁殖状況を比較調査した.各調査地において,日中にカエル類幼生を対象とした掬い取りと,成体・亜成体を対象としたラインセンサスを実施した.また,6 月の日中調査実施日の夜間には,カエル類オスが繁殖期に発する広告音の聞き取り調査を行った.3.結果と考察調査の結果,水田では,ヌマガエル,ニホンアマガエル,ナゴヤダルマガエル,トノサマガエル,ツチガエル,そして特定外来種であるウシガエルの計 6 種が記録された.河道内湿地では,ヌマガエル,ニホンアマガエル,ナゴヤダルマガエル,ニホンアカガエル,ツチガエル,ウシガエルの計 6 種が記録された.水田では,河道内湿地に比べて顕著にカエル類の幼生,亜成体,成体の個体数が多かった.また,広告音を上げているオス個体数も顕著に多かった.特に,ニホンアマガエル,ヌマガエル,ナゴヤダルマガエル,トノサマガエルの 4 種は,水田を主な生息・繁殖場所としていることが示された.その一方で,河道内湿地では,水田で全く記録されなかったニホンアカガエルや,1 個体のみしか記録されなかったツチガエルが,複数の河道内湿地に出現した.これらのカエル類について,調査時に繁殖期の広告音が記録されたり,幼生,卵塊が観察されたりしたことから,河道内湿地を繁殖場所として利用していることが明らかになった.このように,河道内湿地と水田域とで,利用するカエル類の利用状況は異なっており,また,冬期に越冬や繁殖のために水域を必要とするツチガエルやニホンアカガエルにとって,河道内湿地が重要なハビタットとなっていることから,河川域と水田域を含めてカエル類を保全していく視点が必要だと推察された.
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