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発表 御嶽山周辺河川でのイワナの天然分布の把握に向けたヤマトイワナの体サイズと体側の斑紋の色との関連の解析

作成年度 2019 年度
論文名 御嶽山周辺河川でのイワナの天然分布の把握に向けたヤマトイワナの体サイズと体側の斑紋の色との関連の解析
論文名(和訳)
論文副題
発表会 日本陸水学会東海支部会第21回研究発表会
誌名 日本陸水学会東海支部会第21回研究発表会
巻・号・回 2 
発表年月日 2020/02/15
所属研究室/機関名 著者名(英名)
自然共生研究センター小野田幸生
自然共生研究センター末吉正尚
河川生態チーム中村圭吾
抄録
1.はじめにイワナは,河川渓流域の最上流部を主な生息域とする渓流魚であり,その分布を把握することによって,山岳地帯に特有な大規模撹乱,砂防ダムによる分断化,温暖化による水温上昇の影響などを類推することができる.ただし,イワナは釣獲対象魚であるため,漁協による放流などによって,その天然分布が乱され,正確な把握が困難となることも多い.したがって,イワナの分布調査をする際には,放流魚と天然魚とを分別する必要がある.御嶽山周辺河川に自然分布するヤマトイワナはイワナの亜種の1つであるが,体側にある斑紋がすべて,あるいはほとんど赤いことが特徴的で,放流に用いられることの多いニッコウイワナの斑紋が白色であることと対照的であり,その分別ポイントとして有用である(中坊2013).ただし,ヤマトイワナであっても,その幼魚では体側の斑紋が白色であることが知られており,小さな体サイズではニッコウイワナと誤同定されるリスクがあるが,体サイズに応じた斑紋の色の変化の詳細は調べられていない.そこで,本研究では御嶽山を流域にもつ王滝川水系で,ヤマトイワナのみが分布する支川において,体サイズと赤色の程度との関連を解析し,ニッコウイワナとの識別を明確にする材料を提供することを目的とした.2.方法調査地として,ヤマトイワナの生息域である王滝川(木曽川水系)の5つの支川(伝上川,下黒沢,上黒沢,立間ヶ沢,小谷川)を対象とした.調査地選定に先立ち,地元漁協の木曽川漁協の放流担当者に聞き取り調査し,当該支川ではニッコウイワナが放流されていないことを確認した.各支川において,2019年11月21-22日に電気ショッカー(Smith-Root LR20)を用いて,20個体前後のイワナを採集した.採集されたイワナは全長をmm単位で計測した.その後,体側の斑紋の色を目視確認し赤味の強さを5段階の赤味スコア(白=0,赤出始め=1,赤白混じり=2,ほぼ赤or少し白色が混じる=3,赤全体=4)で記録した.なお,白0は,全ての斑紋が赤ではない(白もしくは斑紋が出る前も含む),赤出始めは,斑紋のほとんどが白色で,わずかに(30%程度)赤色のものが混ざる,赤白混じりは,白と赤の斑紋が同程度,ほぼ赤or少し白色が混じるは80%程度赤色,赤全体は全ての斑紋が赤色を示す.3.結果と考察調査を通じて136個体(伝上川24,下黒沢34,上黒沢34,立間ヶ沢11,小谷川33個体)のイワナについて体色を確認した.どの支川でも100mmまでは赤味スコアは0であり,約150mmを越えると赤味スコア4が優占した.加藤(1992)は,ヤマトイワナの未成魚(標準体長:94-158mm)で体側の赤点が測線の下に多く分布し,成長とともに数が増加すると記述している.本研究はその知見を追認するとともに,ほぼ赤色になる全長が150mm程度であることを定量的に示すことができた.ヤマトイワナを含むイワナの陸封型について水系レベルで遺伝的固有性が強いことが指摘されており(中坊2013),他の水系でも同程度のサイズから赤味が増すかは精査が必要だが,同じ王滝川水系内で調査した支川間では,赤色に移り変わる体サイズが似ていた.このことから,王滝川水系内におけるヤマトイワナの同定ポイントとして150mm程度以上の個体を対象とした斑紋の赤味は有効であると考えられる.4.参考文献・ 中坊徹次 (2013) 日本産魚類検索 全種の同定 第三版,東海大学出版会・ 加藤文男 (1992) 水産増殖, 40(2): 145-152.
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