国立研究開発法人土木研究所

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発表 河道内氾濫原はどのような水生動物のすみかとなるのか?―堤内地水田との比較―

作成年度 2020 年度
論文名 河道内氾濫原はどのような水生動物のすみかとなるのか?―堤内地水田との比較―
論文名(和訳)
論文副題
発表会 第11回琵琶湖地域の水田生物研究会
誌名 第11回琵琶湖地域の水田生物研究会
巻・号・回 12 
発表年月日 2020/12/20
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態チーム田和康太
河川生態チーム中村圭吾
抄録
特に近代以降の河川域では,後背湿地の農地開発と治水を目的として,縦断的な連続堤防が整備されてきた.これにより,堤内地と堤外地が分断され,堤内地への氾濫頻度が急減したため,氾濫原が堤外地のみに限られるようになった.こうした氾濫原は河道内氾濫原と呼ばれ,従来の氾濫原とは異なるものの,そこに創出されるワンドやたまり等の湿地群は,水田水域における健全な生息環境が激減している現在,多くの湿地性生物群集にとって重要な生息場所となると考えられている.近年,激甚化する洪水被害を緩和するため,日本の大河川では河川の高水敷を掘削し,そこに湿地環境を形成する取り組みが広がっている.こうした取り組みは,治水だけでなく湿地性生物群集にも生息場所を提供する効果が見込まれるため,治水と自然再生を兼ねた河川整備事業として着目されている.そこで演者らは,止水性湿地環境の代表分類群である両生類と止水性水生昆虫を対象に,かつての大氾濫原地帯である荒川水系の河道内氾濫原にある止水域(以下,河道内湿地)において生息・繁殖状況を調査した.また,それらの結果を堤内地側の水田と比較し,群集構造や各湿地の利用状況の差異を検討した.埼玉県荒川水系の高水敷上に存在する河道内湿地と堤防を隔てて立地する水田および水田ビオトープにおいて,2019年6月から2020年3月まで調査を行った.各調査地間の距離は約250 m圏内であった.調査日に,定量的なカエル類のラインセンサスと止水性水生昆虫を対象とした水中の掬い取りを行った.また,2020年3月には,ニホンアカガエルRana japonicaを対象とした卵塊数の計数を実施した.調査の結果,水生動物の群集構造は河道内湿地と水田とで大きく異なっていた.また,河道内湿地は対象地におけるニホンアカガエルの重要な繁殖場所となっていることが示された.その一方で,ゲンゴロウ類やガムシ類の成虫および幼虫は繁殖期に河道内湿地でほとんど採集されず,水田や水田ビオトープに多かった.これらの結果を踏まえ,河道内湿地と水田といった堤内外を含めた湿地環境が存在することの重要性について議論する.
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