国立研究開発法人土木研究所

論文・刊行物検索

利用者の方へ

詳細情報

発表 濃尾平野の様々な水田環境における希少渉禽類ケリの生息状況

作成年度 2020 年度
論文名 濃尾平野の様々な水田環境における希少渉禽類ケリの生息状況
論文名(和訳)
論文副題
発表会 第68回日本生態学会
誌名 第68回日本生態学会
巻・号・回 3 
発表年月日 2021/03/17 ~ 2021/03/21
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態チーム田和康太
自然共生研究センター末吉正尚
自然共生研究センター東川航
岐阜県水産研究所米倉竜次
河川生態チーム中村圭吾
抄録
ケリは東アジア地域に分布するチドリ科の渉禽類であり,分布域の中で日本が唯一の周年生息地となる.ケリはかつて河川氾濫原や草原で繁殖していたと考えられているが,現在では,主として水田域を繁殖場所とする.近年,圃場整備事業による畦のコンクリート化,農事暦の変化,また水田環境そのものの消失等により,ケリ個体群の縮小が危惧されている.本研究では,国内における有数の一大繁殖地である濃尾平野に着目し,様々な水田景観におけるケリの分布状況を明らかにすることを目指した. 濃尾平野にある15地区の水田地帯で調査した.濃尾平野では,全域で圃場整備が進行しているが,一部には未整備地区やハス田が混在する地区が残されており,このような水田景観も調査地に加えた.各調査地において,2020年7月初旬および9月下旬にラインセンサスによりケリの分布状況を調査した.また,サギ類の種ごとの個体数も同時に記録した. 7月には9地区(標高-1.0 m~45 m)でケリが観察された.これらの地区には,未整備地区やハス田地区に加えて,圃場整備地区も含まれた.また5地区において親鳥の威嚇行動または幼鳥が観察され,繁殖の可能性が考えられた.観察時に各個体が利用していた環境は,多い順に田面(42 %),畦(36 %),畑地(17 %),農道(5 %)となった.Kendallの順位相関係数をみると,7月の各地区におけるケリ個体数と,チュウサギ個体数(τ= 0.75),サギ類出現種数(τ= 0.52)はそれぞれ正に相関した(p < 0.05).このことから,ケリの好む水田は,水田依存型の採餌特性を示すチュウサギにも好適であり,利用するサギ類の種数も多い可能性が考えられた.9月には,ケリの観察地区数が5地区と,7月に比べて減少したものの,そのうち4地区についてはケリの繁殖が推定された場所であった.このため,ケリにとって繁殖に利用される水田地区は,そのまま秋期の採餌場所としても利用されることが示唆された.
ページの先頭へ

この画面を閉じる

Copyright (C) 2022 Independent Administrative Institution Public Works Research Institute