「気候変動」という言葉を、日々の生活の中でも見聞きすることが多くなってきた。現在、気候変動とそれに伴う異常気象は、健康被害、農作物や木材の品質・収量の低下といった一次産業への影響、出水等の自然災害といった様々な分野で人間生活に影響を与えつつある。こうした背景から、気候変動が人間社会や自然環境に及ぼしうる今後の影響に備える「適応策」の立案・実施が必要とされている。では、河川生態系の管理においてはどのような情報が適応策立案に向けて必要なのだろうか?筆者らが重要と考えているのが「優先順位付け:Prioritization」のための基礎情報である。人口減少による税収減に加え、近年は社会資本の老朽化も加速しており、河川管理のみならず社会資本の整備に割くことが出来るコストは限られている。どこで?どんな管理を?どの程度?行うと河川生物の個体数・多様性への効果が特に見込めるのか、適切な管理目標に基づく川づくりが一層重要となってくるだろう。本稿では、まず1章で、河川環境が今後どのように変化し得るか簡単に紹介したい。続いて2章では、気候変動に対する生態系のレジリエンスを維持・向上するのに必要な適応策の枠組みについて、河川ネットワーク管理の観点から説明する。そして最終章では、効果的・効率的な適応策の実施にむけて、どのような点に今後着目していく必要があるか紹介したい。 |