国立研究開発法人土木研究所

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発表 高水敷を掘削した後の樹林の拡大速度

作成年度 2021 年度
論文名 高水敷を掘削した後の樹林の拡大速度
論文名(和訳)
論文副題
発表会 応用生態工学会 第 24 回大会
誌名 応用生態工学会 第 24 回大会
巻・号・回  
発表年月日 2021/09/22 ~ 2021/09/24
所属研究室/機関名 著者名(英名)
自然共生研究センター川尻啓太
自然共生研究センター森照貴
公益財団法人リバーフロント研究所内藤太輔
日本工営株式会社今村史子
日本工営株式会社徳江義宏
抄録
1. はじめに治水と環境の両面の機能を発揮することが求められる河川管理で、河道内の植生管理は重要な管理項目のひとつである。近年では河道内にヤナギ類等の樹木が広く繁茂する現象(樹林化)によって、河道の流下能力が低下するといった治水面での問題が顕著である。そこで、繁茂した樹木の伐採が行われるが、同時に河積を増やすために高水敷を掘削する取り組み(高水敷掘削)が実施されることがある。しかし、掘削後の裸地面に樹木が早期に侵入し、樹林が形成され、さらには拡大するといったケースが散見されている。高水敷掘削による治水対策の効果を長期間発揮させるためには、掘削後の樹林拡大を抑制することなど、植生管理計画の工夫が求められる。これまでに、高水敷掘削後の植生遷移を規定する要因等に関する知見は蓄積されつつあるが、樹林の拡大速度にはあまり着目されていない。そのため、樹林化を抑制する手法が提案されているにもかかわらず、その効果は十分に評価されていない。また、樹林化を想定した上での管理計画、例えば、繁茂した樹木をいつ伐採するか等が十分に検討されていない。そこで本研究の目的は、高水敷掘削後の樹林の拡大速度を示すこと、さらにはどのような条件で拡大速度が変化するかを明らかにすることとした。2.材料と方法2003年から2012年の期間に中部地方の12箇所で実施された高水敷掘削後の裸地を対象とした。衛星写真と航空写真をもとに拡大する樹林を抽出し、GISを用いて各裸地の面積に対する樹林面積の割合を算出した。さらに、掘削からの経過年数と樹林面積の割合の関係(樹林面積の拡大速度)を明らかにするために、一般化線形混合モデルによる解析を行った。モデルには、掘削箇所の河床勾配と掘削時の裸地面の高さ(平水位~豊水位または豊水位以上)を変数として加え、これらの影響についても検討した。3.結果と考察解析の結果、遅くても10年が経過すると約50%の面積が樹林となり、その拡大速度は河床勾配と掘削の高さによって異なることが明らかとなった(図1)。これは、河床勾配や掘削の高さによって裸地面に堆積する土砂の粒径が異なり、土壌水分の違いが生じたことによるものと考えられた。本研究の成果は、高水敷掘削後の樹林化を予測するうえで基礎的な知見となり、樹林化を抑制する手法の効果の評価、伐採時期の決定等への応用が期待でき、河川の植生管理における技術の向上に寄与するものである。
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