令和元年10月に発生した台風19号により,福島県を流れる阿武隈川(以下,本川)上流10.8k左岸(図-1)において,堤防裏のり尻及び堤内地に多数の漏水痕跡(噴砂)を確認した.当該箇所は,支川である佐久間川(以下,支川)との合流点となっており,堤内地は果樹園や畑として利用されている.被災時は,本川,支川ともに本川の計画高水位相当まで水位が上昇していたと考えられる.支川上流部では堤防決壊が生じ,堤内地の氾濫が確認されていた(図-2).支川との合流点における漏水被害としては,2016年の常呂川や2019年の肱川でも確認されている.いずれも本川だけではなく,支川の影響があったことが示唆される.通常,河川堤防の浸透に対する安全性照査は,「河川堤防の構造検討の手引き(以下、手引き)」1)に準じ,代表箇所の堤防を2次元断面でモデル化し,浸透流解析を行いすべりに対する安全性及びパイピングに対する安全性を確認しているが,支川の影響は考慮されていない.そこで本報では,各種現地調査を実施したことにより当該箇所の被災要因を分析した結果を報告するとともに,本川支川の両者をモデル化した2次元及び3次元浸透流解析を行い,支川の影響を安全性照査の中で考慮する方法について考察した. |