道路トンネルの覆工コンクリートに求める機能として,「トンネルの構造安定性の確保」および「利用者の安全性の確保」がある1)。材質劣化による変状のうち,ひび割れは構造安定性や利用者の安全性に及ぼす影響が小さいため判定の対象としていないものの,うきが確認された場合は,コンクリート片の落下の危険性に着目し,対策区分を判定しているのが現状である。材質劣化に起因するうきは,初回点検の段階において目地部に多く発生する傾向があり,年数の経過に伴い,ひび割れとともに増加する傾向があると考えられている。2)近年,ライフサイクルコスト縮減の観点から,建設段階から高い品質の構造物を構築することを目標とし,覆工コンクリートの配合や締固め方法,養生方法等に関して品質を向上させる技術を採用する取組みがなされている。しかし,これらの品質向上技術に対して,構造安定性あるいは利用者の安全性の確保の観点から,客観的な評価は実施されていないのが実態である。本報告では,NATM により建設された道路トンネルにおいて実施された覆工コンクリートの点検記録について,利用者の安全性の確保の観点から,材質劣化に起因するうきを対象に発生した部位や面積等を整理し,覆工の品質向上技術による効果等について把握することを目的に分析した結果を述べる。 |