トンネルにおいて発生する変状は多岐にわたるが,NATM による道路トンネルでの覆工の変状は,「ひび割れ」が最も多い1).ひび割れの原因は,外力が作用するものと,材料,施工方法等よる材質劣化によるものに大別できる.ひび割れの判定は,発生原因を特定することなく,安易にひび割れ幅と長さによって,外力による判定区分や判定の目安で判定を実施することは,適切な判定とならないため避ける必要がある.現時点では,材質劣化のひび割れと判断され,利用者の安全性が懸念され,対策区分の判定を実施する場合,「うき,はく離」または「鋼材腐食」で判定を行っている1).材質劣化のひび割れについても,外力によるひび割れでの判定と同様に,ひび割れ幅や長さ等による定量的な判定の目安を示すことで,今後の効率的な維持管理を実施できる可能性もあると考えている.本稿では,材質劣化によるひび割れにおける定量的な判定の目安の検討に向けた基礎資料として,定期点検結果より材質劣化によると推定されるひび割れについて,ひび割れの幅,長さ等に着目し,ひび割れの形態の傾向を分析した結果を報告する.なお,本稿では,ひび割れの形態を幅,長さ,発生位置・方向とした. |