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発表 土砂供給に伴うダム下流の河床環境変化と底生動物の応答

作成年度 2018 年度
論文名 土砂供給に伴うダム下流の河床環境変化と底生動物の応答
論文名(和訳)
論文副題
発表会 陸水学会東海陸水支部第21回研究発表会
誌名 陸水学会東海陸水支部第21回研究発表会
巻・号・回
発表年月日 2019/02/16 ~ 2019/02/17
所属研究室/機関名 著者名(英名)
土木研究所自然共生研究センター末吉正尚
土木研究所自然共生研究センター宮川幸雄
土木研究所自然共生研究センター小野田幸生
土木研究所自然共生研究センター中村圭吾
土木研究所水環境研究グループ萱場祐一
抄録
1. はじめにダム下流における細粒土砂の不足は、ダム下流の河川生態系を大きく変化させる主要因として知られている。天竜川水系小渋川の小渋ダムでは、2016年よりダム上流と下流を総延長約4.0kmのバイパストンネルでつなぎ、出水時にダム上流から流れてきた土砂と水を下流へと直接流す再生事業が行われてきた。2017年12月時点で計3時期にバイパスを利用した放流が行われており、ダム下流では細粒土砂の増加が顕著に確認された。本研究では、この3回にわたる土砂供給に伴う河床の土砂被覆度の変化と河床に生息する底生動物相の変化を調査することで、細粒土砂分の増加に伴う生物応答を明らかにし、ダム下流環境の改善効果を検証した。2.材料と方法小渋ダム下流における河床環境・底生動物相の時間的変化を検証するため、ダム下流に3地点、ダム上流に1地点、大ダムの存在しない近隣のリファレンス河川(遠山川)3地点を調査地として設定した。それぞれの地点の瀬的環境において、3つのコドラート(50*50 cm)を設置し、河床の底生動物をサーバーネット(目合0.5 mm)で採集した。また、コドラート内の河床材料の被覆度を以下のサイズ区分ごとに目視で計測した。砂:<2mm、砂利:2-16mm、小礫:17-64mm、大礫:65-256mm、巨石:>256mm。バイパス放流は、2016年9月、2017年7月、10月に行われた。バイパスを通過した推定土砂量はそれぞれ11,910 m3、1,420m3、32,250m3と3回目の放流が最も大きい規模の土砂供給となった。調査は、放流前2回(2016年6月、9月)、1回目放流後2回(2016年10月、2017年2月)、2回目放流後1回(2017年10月)、3回目放流後1回(2018年11月)に行った。ただし2回目放流後は、高流量が続いたため、ダム上流とリファレンスでは調査できなかった。本研究では、細粒土砂分の変化に注目し、砂、砂利、小礫の被覆度をそれぞれ応答変数、リーチ(ダム下流、上流、リファレンス)と放流回数(放流前、1回目、3回目)を説明変数として、二元配置分散分析およびTukey’s HSD testを行った。2回目はダム下流のデータしかないため、解析からは除外した。次に、底生動物の種数・総個体数の違いも同様の解析手法で検証した。また、細粒土砂を利用する代表種として、トビケラ目のヤマトビケラの個体数に関しても同様の解析手法で検証した。3.結果と考察河床材料の被覆度を比較した結果、放流前は砂利・小礫がダム下流で少なかった。砂は全リーチで差が見られなかったが、放流回数に伴って全体的に増加した。砂利は放流によって、ダム下流での増加が確認され、他リーチと差がなくなったが、小礫は常にダム下流で少なかった。以上より、小渋ダム下流では砂利・小礫が不足しており、砂利は放流によって増加する傾向が示された。また、3回目放流時の出水では、上流やリファレンスでも山地より多量の土砂が流出し、河床に堆積していた。この出水に伴って、全リーチで底生動物の種数・個体数減少が確認された。それ以前の放流時には、底生動物の種数・個体数に明確な応答は見られなかった。一方で、ヤマトビケラ個体数は放流前にダム下流で少なかったが、砂利被覆度の増加と同様に、1回目放流後増加し、ダム上流とリファレンスの個体数と違いがなくなり、土砂供給に伴う効果が生物にもみられた。
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