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発表 木曽川水系の河道内湿地における水生昆虫群集の特徴-堤内地水田との生息状況の比較-

作成年度 2018 年度
論文名 木曽川水系の河道内湿地における水生昆虫群集の特徴-堤内地水田との生息状況の比較-
論文名(和訳)
論文副題
発表会 応用生態工学会第22回東京大会
誌名 応用生態工学会第22回東京大会
巻・号・回 第22回
発表年月日 2018/09/20 ~ 2018/09/23
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態チーム田和康太
岐阜大学流域圏科学研究センター永山滋也
河川生態チーム中村圭吾
抄録
1.はじめに 河道内氾濫原に形成されるワンドやたまりといった水域(以下,河道内湿地)は湿地に生息する水生動物群集の保全上,重要な環境として着目されている.また,水田水域における健全な水生動物群集の生息場所が減少している現在において,河道内湿地の重要性が増している.しかしながら,魚類や貝類等,一部の分類群を除くと,河道内湿地がどのような水生動物の保全に効果的なのかが判然としていない.今回,演者らは湿地性水生動物の指標的な分類群であるトンボ目幼虫,水生カメムシ目および水生コウチュウ目の3分類群の水生昆虫を対象に,堤外地の河道内湿地と堤防を隔てて隣接する堤内地の水田において,それらの生息状況を比較した.その結果を踏まえ,水生昆虫群集の保全に対する河道内湿地の役割を明らかにすることを目指した.2.調査地 河道内湿地が各所に存在する木曽川水系に着目し,木曽川と長良川の河道内湿地および堤防を隔てて隣接する水田を調査地に設定した.木曽川,長良川ともに河道内湿地と水田を6地点ずつの計24地点で定量調査を実施した.1 mmメッシュのタモ網を用い,一つの調査地ごとに8回の掬い取りを行った.この調査法によって採集された水生昆虫類を可能な限り下位まで分類し,それらの分類群ごとに個体数を計数した.これらの調査を2018年6月13日から14日まで行った.3.結果と考察すべての調査地を合わせて計28分類群1,341個体の水生昆虫が採集された.その内訳はそれぞれ,トンボ目幼虫が11分類群37個体,水生カメムシ目が7分類群1,152個体,水生コウチュウ目が10分類群152個体であった.水田ではトンボ目幼虫が全く採集されなかった一方で,河道内湿地では,池沼性のモノサシトンボCopera annulataや,クロイトトンボParacercion calamorum calamorumなど多種の分類群が採集された.また,近年のため池の改変および消失によって減少している水生カメムシ目のミヤケミズムシXenocorixa vittipennisが河道内湿地のみで採集された.このことから,河道内湿地が恒久的な水域を好むこれらの種の生息・繁殖場所となっていると考えられた.その一方で,水生コウチュウ目のコガムシHydrochara affinisやヒメゲンゴロウRhantus suturalisなどの幼虫は水田のみでしか採集されなかったことから,これらの種は水田を主な繁殖場所として利用するものと考えられた.以上より,調査地の河道内湿地は,水田水域においてため池等の安定的な水域を生息場所とする水生昆虫にとって重要であることが示唆された.しかしながら,河道内湿地と水田では異なる水生昆虫群集が形成されているため,本調査地のように両水域が存在していることが,水生昆虫群集の多様性の保全に有効となるものと考えられた.
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