2016年熊本地震によって甚大な建物被害が発生した地域の一つである同県益城町において,建造物被害や土工構造物損壊の偏在性に影響したと想定される浅部地盤の不均質構造の把握を目的として浅部物理探査を実施した.適用した手法はハイブリッド表面波探査,キャパシタ電極カップル型比抵抗(CCR)探査およびVRS-GNSS精密測位連動型地中レーダ(GPR)探査である.ハイブリッド表面波探査は,Active探査とPassive探査を連続して実施することを特徴とし,筆者らが新たに考案した表面波探査法である(稲崎ほか,2015).表面波分散特性からS波速度構造を推定できるだけでなく,ショットギャザに記録された反射波を対象として通常の反射法データ処理を適用することもできる.町内の市街域に2本,地表断層(木山断層)出現部に3本,合計5本の短い測線を設定した.解析処理の結果,GPR探査では深さ2m程度まで詳細な表層構造をイメージングすることができ,地表断層出現部では縦ずれ変位を伴う断裂群を捉えることができた.CCR探査では表層10m程度までの比抵抗構造を捉えることができた.断層交差部では比抵抗構造に南東側上がりの変形構造を解釈することが可能であった.また市街域測線では,南側で低比抵抗層(軟弱層)が厚くなる構造を認めることができた.ハイブリッド表面波探査およびそのP波反射法処理結果では,断層交差部で南東側上がりの速度変形構造をイメージングすることができた.地表出現断層の地下には,幅100m程度の撓曲変形帯が存在し,逆断層構造を示す鉛直累積変位があることがわかった.市街域測線では,南側で低S波速度層(軟弱層)が厚くなる,比抵抗構造と調和的な構造を認めることができた.益城町市街域ではこれまで多数の機関によって被害調査・地盤調査が実施されてきた.しかしその中には断面解釈が稚拙であるか,データ処理が不適切で初期モデルに依存した偽像を真の構造と解釈している事例が認められた.我々の探査は,2m間隔以下,GPRでは1cm以下の間隔でデータを取得解析しており,このような稠密な測定条件の設定と解析処理が局所的な不均質構造の把握に重要であることを示した. |